『片想い』
東野というからにはミステリーだ。驚くのは、昨今ならまだしも「3年B組金八先生」ですらまだ取り上げていなかった「性同一性障害」を題材に、友情と恋愛を絡ませてミステリー仕立てにした作品であることだ。東野は、登場人物に、男と女の境目は書類(戸籍)が正しいというわけじゃなく、メビウスの帯のような連続線だと言わせている。ジェンダー多様性に対して一方的な決めつけをする社会への怒りも随所に感じる。片想いの主についても複層的。ジェンダー違和についても何が正しくてなにが的外れかなどと考えること自体がお門違いな気がして東野のミステリー世界に迷い込む。しかし、読後の気分は良い。東野圭吾、恐るべし。
2024/01/15 レビュアー:はるか