
『彼岸花が咲く島』
『ポラリスが降り注ぐ夜』の作者による謎の島のお話。主人公の宇実(ウミ)にもダブル主人公の游娜(ヨナ)にも性的指向の偏りがありそうなエピソードがところどころ散りばめられています(いわゆる百合作品と認識されている方も)が、本作の主題はLGBTQ+ではありません。
舞台の島は、女性だけが学べることがあり、女性だけが就ける職業があり、それに嫉妬し憧れる男性がいる、まさに少し前の、もしかすると今でもそうかもしれませんが、男性優位社会をさかさにしたような不思議な世界。
なぜそんなルールが作られたのか?どうして性別で区別しなければならないのか?
ある日島に流れ着いた宇実の疑問から「性別」や「特権」の意味を考える日々が語られ、そして思考が現代日本と繋がった時、今の社会、今の世界の有り様を問い直す壮大な次元へと一気に読者の思考を誘ってくれます、と思います(最後は少し気弱…)。
2021年芥川賞。
2025/05/25 レビュアー:パフェねこ栞