『The Exvangelicals Loving, Living, and Leaving the White Evangelical Church』
しばしばキリスト教はLGBTQ+に否定的だといわれますが、それはキリスト教教派のごく一部のことで、特に聖書を字義通り理解実践しようとする原理主義、異教徒異宗派を教化することを信徒の使命とする福音派、その中でも建国の事情背景があってアメリカ合衆国内のそれら宗派に顕著です。さらに彼らの現在持っている政治的な力もLGBTQ+側からは大変な脅威であるわけです。
ところがそんな政治的な絶頂と並行して、この勢力の中心である白人福音派はその内部から崩れてきているのではないか:閉じられた家族、教育システム、コミュニティに守られて成長した二世信者たちが次々と教会と距離を置くようになった…という調査も聞くようになりました。
彼らは政治運動だけでなく(例えば、ブラック・ライブス・マターに対する自教会の態度であったり、教義通りに考えれば地獄行きなのでは?という政治家を自教会が熱狂的に支持していたり)、大人になってから知り合ったた隣人たちにも(例えば、LGBTQ+も異教徒も進化論を信じる科学者も、実際会ってみるとちっとも邪悪でない)、教義と主観で感じる現実との食い違いに悩み、そこから自分の生い立ちは大きなトラウマを残してきたし、また教会と距離を置こうとすれば払わなければならない大きな代償に気づき、さらに悩まれます。
この本の「縦糸」となる人物は、妻に先立たれた後でカミングアウトをした著者のおじいちゃん(ゲイ)なのですが、著者は子どもの頃から家族の間で謎の取り扱いになっていたこのおじいちゃんとの交流をところどころに挟みながら、著者と同じように成長してから福音派をやめたほかの青年層中年層のストーリーを、統計調査とともに綴っていきます。
2024/11/18 レビュアー:Miyaken.