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海辺のカフカ

2024.10.21

本作の登場人物の一人に図書館に勤める青年の大島さんがいます。物語の中盤、とある出来事をきっかけに、彼はさらりと、実は自分は身体的には女性であること、追って、男性の恋人がいることを主人公のカフカに語ります。彼の背景はカフカの視点を通じて自然に受け止めれられます。そこから、二人とも特異性があり、社会からどこか浮いてしまっているゆえに導き合うことができる関係性ができていきます。村上作品は全体的にマイノリティに優しいです。特に海辺のカフカは、普通に読んでも面白いのですが、トランスの登場人物が前述のように自然に登場するので一セクシャルマイノリティの視点で読んでも、清々しい気持ちになれます。大島さんの背景がただそういうものとしてある、それだけで、現代の一読者としては、安心感を抱くことができる作品です。

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