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おすすめの図書

セクシュアルマイノリティ(LGBTQ+など)について知りたい、
LGBTQに関する図書を読んでみたい。
ここではスタッフのおすすめ本の紹介と、SHIPで読める本を
調べることができます(蔵書検索は準備中です)。

スタッフのおすすめ図書

『The Exvangelicals Loving, Living, and Leaving the White Evangelical Church』

Sarah McCammon / 2024 / St. Martin’s Press, New York

しばしばキリスト教はLGBTQ+に否定的だといわれますが、それはキリスト教教派のごく一部のことで、特に聖書を字義通り理解実践しようとする原理主義、異教徒異宗派を教化することを信徒の使命とする福音派、その中でも建国の事情背景があってアメリカ合衆国内のそれら宗派に顕著です。さらに彼らの現在持っている政治的な力もLGBTQ+側からは大変な脅威であるわけです。

ところがそんな政治的な絶頂と並行して、この勢力の中心である白人福音派はその内部から崩れてきているのではないか:閉じられた家族、教育システム、コミュニティに守られて成長した二世信者たちが次々と教会と距離を置くようになった…という調査も聞くようになりました。

彼らは政治運動だけでなく(例えば、ブラック・ライブス・マターに対する自教会の態度であったり、教義通りに考えれば地獄行きなのでは?という政治家を自教会が熱狂的に支持していたり)、大人になってから知り合ったた隣人たちにも(例えば、LGBTQ+も異教徒も進化論を信じる科学者も、実際会ってみるとちっとも邪悪でない)、教義と主観で感じる現実との食い違いに悩み、そこから自分の生い立ちは大きなトラウマを残してきたし、また教会と距離を置こうとすれば払わなければならない大きな代償に気づき、さらに悩まれます。

この本の「縦糸」となる人物は、妻に先立たれた後でカミングアウトをした著者のおじいちゃん(ゲイ)なのですが、著者は子どもの頃から家族の間で謎の取り扱いになっていたこのおじいちゃんとの交流をところどころに挟みながら、著者と同じように成長してから福音派をやめたほかの青年層中年層のストーリーを、統計調査とともに綴っていきます。

2024/11/18 レビュアー:Miyaken.

『海辺のカフカ』

村上春樹 / 2002 / 新潮社

本作の登場人物の一人に図書館に勤める青年の大島さんがいます。物語の中盤、とある出来事をきっかけに、彼はさらりと、実は自分は身体的には女性であること、追って、男性の恋人がいることを主人公のカフカに語ります。彼の背景はカフカの視点を通じて自然に受け止めれられます。そこから、二人とも特異性があり、社会からどこか浮いてしまっているゆえに導き合うことができる関係性ができていきます。村上作品は全体的にマイノリティに優しいです。特に海辺のカフカは、普通に読んでも面白いのですが、トランスの登場人物が前述のように自然に登場するので一セクシャルマイノリティの視点で読んでも、清々しい気持ちになれます。大島さんの背景がただそういうものとしてある、それだけで、現代の一読者としては、安心感を抱くことができる作品です。

2024/10/21 レビュアー:R

『黄昏の彼女たち(上)(下)』

(作)サラ・ウォーターズ、(訳)中村有希 / 2016 / 東京創元社(創元推理文庫)

第一次世界大戦で父と兄を失い、母と二人でロンドン郊外で暮らす、元上流階級の主人公フランシス。
生計のためやむを得ずバーバー夫妻に部屋を貸したことから、徐々にバーバー夫人ことリリアンと距離が近づいていき、そんな中でとある事件が起こります。
上巻はドロッドロな恋愛模様で、下巻からは一気にミステリー小説の展開になっていきます。

誰もが自己の正当性を見つけようとしていたり、いやらしい部分を持ち合わせて生きているということがよく描かれており、
いい意味で(?)登場人物の誰にも感情移入できないままに物語が展開していくのが面白さかなと思います。

また後日、漫画家の萩尾望都が自伝で著者の名前を挙げているのを見て、何らかの影響を受けているのかな、と感じました。

2024/09/16 レビュアー:ほたるいか

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